どこか懐かしいインドネシアの人と暮らし

  • 2014/07/09
  • Indonesia

インドネシアの庭の花。アジサイや月下美人も見かける。

礼拝から始まる暮らし

太陽もまだ顔を出さない午前5時前。イスラム教の礼拝施設、マスジドからアザーン(イスラム教における礼拝への呼びかけのこと)の声が拡声器を通して鳴り響く。「神は偉大なり」から始まるアザーンの語句は、人間の義務とされている一日5回の礼拝へ人々を呼びかけるためのものである。マスジドは1km程の間隔で点在しており、遠くのマスジドから順々にアザーンが鳴るため、この一時はざわざわとした雰囲気になる。ここインドネシア共和国にあるジャワ島はイスラム教徒の数が多く、イスラム教の教えに沿った慣習の中で南国特有の大らかな性格をもった人々が暮らしている。

近所の奥さんたちとおしゃべり。

インドネシアのパサール(市場)へ

朝の礼拝を済ませた義母は身なりを整えパサールと呼ばれる伝統的な市場に買い物に行く。パサールの朝は早い。野菜売りなどは午前3時頃から商品を広げている。パサールではインドネシア各地の民族が商売をしており、生鮮食品や衣料品、雑貨類などあらゆる物が売られている。日本にあるスーパーマーケットと同様の店もあるが、生鮮食品はパサールで売られているものの方が安くて新鮮だと感じる。パサールの中の匂いは独特だ。果物や肉や干物や人の匂い、そしてゴミや排気ガスの臭いが混ざる。インドネシアの生活の匂いとはこの匂いなのかもしれない。

「ベチャ」と呼ばれる乗り物。それぞれの持ち主が色とりどりに装飾している。運賃は決まっていない。

インドネシアの交通手段

パサールで買い物をして荷物が重くなったときは、人力車に自転車を取り付けたような「ベチャ」と呼ばれる乗り物にのる。ベチャの座席は1人で乗るには広すぎるが2人で乗るには狭すぎる。きっと大きくなった買い物袋を隣に置いて1人で乗ったらちょうど良いのではないだろうか。他に、「デルマン」と呼ばれる馬車もある。6人ほど乗ることができ、風や馬の蹄の音が心地よい。しかし座席が幾分高いので、乗り降りに注意しなければならない。遠出する際には「アンコット」と呼ばれる乗り合いバスに乗る。バスといっても、ワゴン車に7人乗れる向かい合った座席を取り付けたもので、多くは乗り降りのドアが開いたままになっている。時々、ギターを持った流しの青年がひょいっと乗り込んで1フレーズほど歌ってお金を払わずに降りていく。

流しの青年。とてもきれいな演奏だった。

乗客が降りるときは「キリ(左)」と言って、それぞれの好きな場所で止めてもらう。都市間を移動する際には「トラベル」と呼ばれるワゴン車もしくはミニバスがある。トラベルは数日前に予約する必要があるが、指定席になっているため快適な移動が可能だ。渋滞が多いインドネシアでは、狭い道でも通れるバイクタクシー「オジェック」もよく利用されている。その他の移動手段として、バスやタクシーや機関車がある。バスは日本では考えられないほど昔のものが黒い煙を吐きながら現役で活躍している。私が先日乗ったバスは雨漏りがした。タクシーは乗車する前に運転手と値段交渉をする必要がある点が日本と違うところだろう。運転手はサービスの会話をすることがほとんどない。値段が決まっている以上、渋滞の道をどう避けて目的地へたどり着くかに集中しているようだ。機関車の一般的な車両には冷房はついておらず、代わりに扇風機が取り付けられドアが開きっ放しになっている。少し高いチケットを買えば、冷房がつきドアが閉まる、指定席の快適な車両に乗ることができる。ただし一人で座れないような幼い子どもでも、大人と同額の料金を支払わなければならない。ホームには車両番号が書かれていないため、乗りたい車両が随分と先で止まってしまい、走っていくことがよくある。しかもドアが大人の腰の高さにあるので乗る際には注意する必要もある。インドネシアではバイクを持っている人が多く、通勤と帰宅の時間帯、休日は特に道がバイクでいっぱいになってしまう。最近では価格の低い車も販売され始めたので、今後ますます渋滞が深刻な問題になりそうだ。私の義姉は通常30分ほどの道のりを毎日2時間かけて帰ってくる。雨季で大雨が降った後は道が洪水してもっと時間がかかる場合もあるからかわいそうだ。

黄色いジャケットを着た警官が立っている。右側に見える緑の車は「アンコット」。バイクはYAMAHAやHONDAやkawasakiが人気。

雨季の洪水は道だけでなく、家も浸水してしまうことがある。我が家も毎年1回は浸水してしまう。今年は2回も浸水した。夜8時頃、義母が荷物やいすを高いところに移動し始め、夜12時頃にはベッドの下まで浸水してしまったのだ。洪水の水は赤茶色に濁っていて冷たい。義弟も仕事を休み、朝になると家族総出で大掃除が始まった。洪水の日の家の前の道は、いつもの行商人達が通らないため、子ども達が水遊びをする声しか聞こえない。

道行く行商たち

インドネシアにはいろんな種類の行商がいる。鶏のおかゆ、お菓子、肉、野菜、麺、パンなど挙げていったらきりがない。それぞれの行商に独特の掛け声や音がある。「チリンチリン」という音は米粉で作ったデザートを売る店、「タフー」という掛け声は豆腐を売る店、「ロティ、サリロティ」という歌はパンの店。毎日だいたい決まった時間に通りすぎるので、買いたい物があるときはテラスで座って待っている。

クルプックという軽い食感の揚げせんべいを売る人。

季節の果物を売る行商に出会うといつも買ってしまう。インドネシアは日本のような四季はないけれど雨季と乾季に大きく分けられる。以前は月の名前の最後に「-ber」のつく間(9月から12月)が雨季だといわれていたが、最近は4月を過ぎても雨季のような天候が続いている。果物は雨季よりも乾季の方が甘く美味しくなるように感じる。乾季の7月頃が旬の「マンゴー」は特に甘い果物だ。その他、「ドゥク」という小さな果物や「ジュルックバリ」という大きなみかん、「アボカド」「マンギス(マンゴスチン)」「ランブータン」「パパイヤ」「バナナ」「ブドウ」「ドリアン」「グァバ」など多くの種類の果物がある。

ジュルック・バリと呼ばれる柑橘類(左)と普通のみかん(右)

インドネシアの子どもたち

乾季になると、夕方、学校から帰った子ども達が空き地や道路で凧揚げをして遊んでいる。相手の凧糸を切って勝ち負けを決める遊びは、小学生から高校生までの男の子に人気だ。小学校低学年くらいの小さな子どもが上級生に凧のあげ方を教わっていたり、就学前の子どもが見よう見真似で手作りの凧を引きずりながら歩いている姿はとても微笑ましい。

自転車で遊ぶ子ども達。

インドネシアでは女の子と男の子が一緒になって遊んでいる光景もよく目にする。子供同士がとても仲がいい。そして年上の子どもが年下の兄弟の面倒を見ることが当たり前になっているようで、まだ歩き始めたばかりのような小さな弟や妹を腰に抱きながら友達と遊ぶ小学生くらいの子どもをよく見かける。このように幼い頃からたくさんの人と関わって育ってきたインドネシア人に社交的な性格の人が多いことは必然なことだと思う。インドネシア人は一般的によく冗談を言い合い、よく笑う。ただし、仕事や宗教行事のときなどは真剣に取り組む。オンとオフの使い分けを上手にできることがインドネシア人の素晴らしいところだ。

「ワルン」と呼ばれる駄菓子と雑貨を売る店。小学生がお菓子を買いに来ている。インスタントコーヒーやシャンプーなどが1回使い切りの小分けになって売られてる。

今回は初回のため、インドネシアの人と暮らしの一片を紹介した。次回からは、より深くインドネシアのことを日本の皆さんに伝えるため、インドネシアの伝統的な美容法や食べ物、医療事情や人気のスポーツなどを紹介していきたいと思う。

おまけ:のら猫。インドネシアはのら猫が多い。

お読みいただきありがとうございました。今回からBASB Magazineでインドネシアの記事を執筆させていただくこととなりました羽根田と申します。

インドネシアに来て3年目。雪のない静岡で育ち、雪のある街に憧れ札幌で学び、そこで現在の主人と出会い結婚し、再び雪のない土地インドネシアで暮らしております。






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