「アラビア書道」の若きアーティストが語る!究極の文字芸術への道

  • 2016/07/24
  • Dubai

かつてピカソは、”アラビア書道”について、このように言いました。「もし“アラビア書道”のようなすごいものの存在を私が知っていたら、絵を描き始めることはなかっただろう。わたしは最上級の芸術的な熟達を目指して努力してきた。しかし “アラビア書道“は、わたしが存在するよりもずっと昔から、すでに極みに達していたのだ。」西洋の偉大なる芸術家ピカソは、アラビア書道の完璧な芸術性を認めていたのです。今回は、”アラビア書道“についてご紹介します。

幾何学模様の花。花びらには5人兄弟の名前

ある時、ドバイのフェスティバル・シティにて開催された『Emirates Airline Festival of Literature(エミレーツ航空主催・文学フェスティバル)』というイベントに出向いた際、アーティストの女性による絵画の実演・展示がありました。抽象的、曲線豊かで、調和が取れた美しさに足を止め、思わず見とれてしまったのです。すると、その絵画だと思っていたものこそ、“アラビア書道”だったのです。“アラビア書道”は、簡単に言うとアラビア語をデザインの中の一部として、時には花や草などの他の模様とともに一枚の紙に描くもの。ぱっと見では“文字”だと気づかないほど自然で、他の模様と見事に引き立て合うのです。

エミレーツ航空主催・文学フェスティバルにて実演

そもそも、イスラム教徒にとって重要な聖典『コーラン』はアラビア語で書かれていますが、神の言葉を記すもののため、“美しい文字”で書かなければいけませんでした。それで、文字芸術が千年以上をかけて発達し、アラビア書道の完全なる美を形作ったという経緯があります。

前回の記事では、アラビア書道をもとにしたゴールド・ジュエリーのお話をしました。イスラム文化の芸術で重要な“アラビア書道”とは、どのようなものでしょうか?実際に展示を見させてもらった、アラビア書道アーティストである、ハニファさんにインタビューをしました!

イスラムの人々にとって“アラビア書道”とは

家族の名前をモチーフに

「アラビア書道は、イスラム教徒のわたしたちにとって、“アイデンティティー”と“伝統”そのもの。聖なる『コーラン』の一節を書いたアラビア書道の作品を、家で額に入れ壁にかけている家庭は多いです。」と話すハニファさん。さらに、なぜ壁にかけるのかというと、そうすることで、アラーの神様が家を守ってくれて、家族に祝福を与えると信じているから、とのこと。しかも、知り合いから贈り物としてもらうことは余り好まれず、信念に関わることだから、自分たちで選んで“買う”のがいいとされています。

驚くべきことに、伝統的な“アラビア書道”は、ドバイを含むアラブ首長国連邦で若い人々にとっても“とても重要なもの”として捉えられています。ドバイにはアラビア書道を教える文化センターが多々あり、若い世代の人々も、そういった機関で技法を習います。伝統・モダンスタイルを融合したアラビア書道家としてのスタイルを築き上げつつあるハニファさんも、その一人。

近郊の学生が文化センターを見学し、ハニファさんの作品を紹介

伝統が廃れることなく、受け継がれていく理由は、やはりアラビア語が『コーラン』に使用されているため、個々の存在意義がダイレクトに関わってくるからだと、ハニファさんは言います。「伝統と文化は、その国がその国である理由だから、伝統を保持し、いつも関心を持つことは、良い国・人になるために重要なことだと思う。」どんどん近代化が進むドバイでも、世代を超えて宗教と生活が密接なことに変わりはないということが、ハニファさんのお話からよく伝わってきました。

ハニファ・スタイル

自身の名前“Hanifa”をモチーフに

カラフルな作品が、彼女のアートの特徴。眺めていると、元気が出てきそうな気がしませんか?理由は“フレンドリー”で“ハッピー”であることを表現したいからだとか。「人生で困難にあう時もあるけど、だから、人生はカラフルだとも言える。神が世界をそのように、カラフルに創造しました。困難はじきに去り、また困難により人生の他の色(面)を見ることができます。私たちの人生はいつも美しいのです。」と、ハニファさん。達観した言葉に、はっとしました。

色鮮やかなお客様からのオーダー作品

ハニファさんは、もともとフィリピンの Lanao del Sur(ラナオ・デル・スル)という、人口の99%がイスラム教である地方の出身です。アラブ首長国連邦には9年間在住し、アラビア書道の様々なスタイルを学び、イベントなどで活動してきました。彼女のフェイスブックページを見ると、遠方のお客様からの感謝の言葉や、イベントで多数の人に囲まれ活躍する様子が伺えます。

人との交流が楽しい実演・展示イベント

ハニファさんは、“人々”からインスピレーションを受けるため、お客様の名前をアラビア語にするスタイルを好みます。“名前”の使用にこだわる理由は、出身国を離れアラブ首長国連邦という多国籍な国で、違う文化の人々と融合する国に住んでいるため、“人” そのものを常に意識しているから。その人の名前を書くことで、つながりが生まれ、幸せな気持ちになるそうです。画材は水彩にアクリルインクを使うときもあれば、ハンドメイドの紙の時はアラビア書道用のインクを使用します。線の一つ一つが生きているようで、繊細な技が光ります!

アラビア書道の様々なスタイルを勉強し続けているハニファさん

興味深いことに、日本におけるアラビア書道の第一人者である大東文化大学の本田教授は、“アラビア書道”は自然観をあらわすとおっしゃっています。“……炎熱の砂漠の文化。自然に対し一体化も征服もできません。逆に人間は弱いものとして自然から逃げようとする。その結果、自分の内面に自然に代わる支えを見つけようとする。そこにイスラムの発生を見ることができます。アラビア書道は、絵画などと違い抽象的な文字の中に、第二の自然を見つけようとする営みです。”

アラビア書道を見て、日本人の私でも不思議と心が落ち着く理由が、この説明を通して分かります。ハニファさんの場合、自国を離れ異なる環境で切磋琢磨し、彼女にとっての第二の自然が”人“であったのかと思いを馳せました。

妹の名前“FARINA”をモチーフに

彼女の近い将来の夢は、単独で個展を開くこと。そして、最終的な夢は、自分のフィリピン・ムスリム・コミュニティで、アラビア書道の文化センターを開き、子どもからお年寄りまで色々な年代に教えること!彼女の、人を大事にする姿勢とポジティブさがあれば、叶うような気がしませんか?

Beauty

では、مع السلامة マッサラーマ(また会う日まで)!






【取材協力】

・Hanifa M. Balangue (ハニファ・エム・バランゲ)・・・アラブ首長国連邦在住、アラビア書道アーティスト。2014年、2015年の『エミレーツ航空主催・文学フェスティバル』などドバイの各種イベントに参加。中東諸国や他国からのオーダーも受け付けている。アート愛好家であることに加え、歴史本の読書、歴史的建造物を旅行するのが好き。世界中を見てユニークな文化、異なる国の伝統を勉強したいと思っている。医療系大学卒業生だが、それでも隠れた才能やスキルが誰にでもあるはずだから、やりたいことを学び、追い求め続けるのがモットー。彼女のフェイスブックとツイッターで、最新情報をチェック!

 facebook:https://www.facebook.com/hmbarabiccalligraphy/

 twitter:https://twitter.com/hmbcalligraphy

【参考】






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