ドバイ発!イスラム社会で「最も尊敬されるベリーダンサー」とは

  • 2014/12/13
  • Dubai

ドバイ発!イスラム社会で「最も尊敬されるベリーダンサー」とは

中東文化の代表、ベリーダンス!

ここドバイでは、ベリーダンサーとして商業的に成功しても”尊敬されるダンサー”になることは、難しい環境です。意外でしょうか?

理由は、イスラム文化で”公共の場で踊ること”すら不適切な行為として禁止されているから。女性は人前で肌を見せることが禁止で、音楽やダンスも”魂を乱すもの”と捉えられています。

高級ホテルや観光客向けの砂漠ツアーでは、政府の許可を取った上でショーが行われていますが、そこではローカル・ダンサーは当然皆無。多国籍のダンサーが活躍しています。

このような背景の中、イスラム社会でベリーダンスの芸術性を認知させ、ドバイで最も尊敬されるベリーダンサーとなった女性が一人います。

オリエンタルなベリーダンスを中東で30年間踊り、生徒に伝承し続けるLydia Tzigane(リディア・ツィガーネ)さんです。彼女のベリーダンス・クラスに筆者も通っており、今回取材をして、どのようにして”尊敬されるダンサー”になったのか、聞いてみました!

ベリーダンサーのイメージを変えたい!

1986年、リディアがドバイに来た頃、世間は現在よりずっと保守的でした。ベリーダンサーと言えば”セクシーな踊りをして、お金のために男性の後を追う”偏見がありました。

シェラトンホテルでベリーダンサーとして働くスカウトを受けた、若いリディア。そもそもシェラトンホテルが何かを知らず、面接のためにタクシーで到着すると建物を見上げて歓声を上げたとか!人生で見た中で一番素敵な建物だったからです。

そしてジーンズをはいてきたことに気づいて大慌て! でも、いざ衣装をつけて踊ってみたら「気に入った」とその場で契約書が用意されました。

この幸運が信じられず、ホテル入り口の豪華な螺旋階段をシンデレラ気分で降りて行って「今、ここでの仕事がもらえたのよ!」とロビーの見知らぬ人々に話してまわったとか。

同時に、当時はびこるベリーダンサーのイメージに対し「私はそうはならない。ベリーダンスは本来エレガントだから、それを追求する」ことを決心しました。

そのため露出過多な衣装を控え、男性との接触をプライベートで一切持ちませんでした。社交が全くない生活には、成功と孤独がありました。でも、勝ち取った幸運におごらず信念を貫いた強さとエレガントな生き様が、やがて世間からの賞賛に変わりました。

オランダのロマ族ジプシーとして産まれ、周囲の偏見の中で苦労し、厳しい人生のスタートを自分の手で変えたリディア。成功しても「自分のルーツを隠さず、いつも忘れないようにしている」と言います。

やがて各国王室に招聘されるほどになり、特にマレーシア国王とお妃様の前で踊った時には「この姿をジプシー・キャンプのみんながみたら、どう思うだろう!」と感無量だったとか。各種新聞社からは”最もエレガントで品の良いベリーダンサー”と称賛され、リディアの夢が一つ叶いました。

ドバイにはホテルがぽつぽつと数件あるだけで、高層ビルもなければショッピング・モールもない・・・・・・砂漠だらけの国だった時のお話です。

”クローンを作らない”ベリーダンス・クラス

では、実際にリディアのクラスを紹介します。ドバイと近郊のシャルジャにて指導していますが、ドバイクラスの場所はジュメイラ地区にある『The Ballet Centre(ザ・バレエ・センター)』。大きなヴィラ(一軒家)の2棟続きが、レッスン場となっています。

レッスンは”自分で感じ考える力を伸ばす”もの。巷では先生から与えられた1曲分の振付を覚え完成するレッスンが多い中、リディアのクラスでは、ステップの組み合わせだけを教えてもらいます。初めて聴く曲から生徒が音楽を感じ、リズムを見出し、習ったステップから自由に振り付けてみる、そんなレッスンなんです。

それは、先生のクローンではなく”アーティスト”を作りたい思いから。近頃のベリーダンス・シーンは、有名なダンサーが世界中に出向き同じ曲・振り付けを教えて回る。それを習ったダンサーが、同じことを生徒に教えるためコピーのようなクローンが増えてしまいがちだと懸念するとか。

また、クラス代は驚くほど安価に設定されています。通常1時間のレッスンが80ディルハム(約2,500円)以上するのが相場のドバイで1時間半のレッスンが55ディルハム(約1,720円)。

「どんな道端の少女にも才能がある。だからチャンスをあげたい」と、例えば1ヶ月10万円も収入がない出稼ぎメイドさんでも、頑張れば来られるようにしています。

フィットネスクラブのレッスンの一部に組み込まれることが多いドバイで、ベリーダンスをしっかり習いたい人はリディアのクラスに来ます。世界中の先生レベルの人が、わざわざ習いに来ることも!

生徒は多国籍で、年齢層も学生からママまで様々。ドバイにいる他の先生たちよりアラブ系の生徒が多いです。これも、リディアがエレガントなベリーダンサーのアイコンだから!

リディア自ら露出を控えたレッスン着でイスラム文化をリスペクトする姿勢も理由の一つとしてあろうかと思います。生徒から人生相談を受けることも多いとか!

アラブ女性にとってベリーダンスとは

さて、アラブ女性たちは”自己解放”のためにクラスに来ます。メイドさんがいて何不自由ない暮らしで、自己表現の制約がある中”自分らしさ”を見失うことも。

それがベリーダンスをすると、その時だけ”クレイジー”になれるのです。だから、レッスンで生徒はショーで着るようなロングスカートをはき、美しいメイクをしています。

そもそも世界最古の踊り・ベリーダンスは、イスラム教が興る前に、女神信仰と関係して安産祈願などを目的に始まりました。ダンサーの社会的地位が高かった時代もあり、イスラム教の普及後にも女性により受け継がれてきて、体型や年齢問わずできる”女性の一生に寄り添う踊り”です。

リディアの活動はUAEのベリーダンス・シーンを品格あるものに育て、ベリーダンスが女性のための”芸術”だと世界に思い出させてくれました。

だから、アラブ女性にとってリディアの存在は”元々私たちのものだったものを、返してくれた”人と捉えられているのではないでしょうか。

では、مع السلامة マッサラーマ(また会う日まで)!






【取材協力】

Lydia Tzigane(リディア・ツィガーネ)・・・UAE在住のベリーダンサー、講師、振付師で1984年から中東にてダンサー活動を開始しショー出演は5,000回以上。シェラトンホテルなどの有名ホテルに加え、BBCやエミレーツ航空のビデオクリップ、映画出演もはたす。現在ドバイのThe Ballet CentreとシャルジャのSharjah Ladies Clubにて指導。

みなさんへのメッセージ・・・・・・「無限の可能性は子どもにも大人にもある。どんなに人生のスタートが恵まれたものでなくても、今制限の中にあっても、人生は必ず変えられる」

【ワールド・ベリーダンス・デイ】

World Bellydance Day(ワールド・ベリーダンス・デイ)』・・・2007年にリディアが創立した、1日だけで開催される世界初&最大の国際的ベリーダンス・チャリティイベント・デー。毎年5月の第2土曜日に開催され、世界中のダンサーが各国で企画&参加。

コンセプトはベリーダンス本来の芸術性を大切にし、どんな世代や年齢にも受け入れられる”家族向けのアート”としてベリーダンスを楽しむ日とすること。毎年参加国が増加し、2014年には41カ国が参加!

2015年は5月9日(土)に開催予定、参加者受付中。日本からもどんどん参加ください!






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